ちょっとセンチメンタルなお話。


こんにちは。
イギリス人店長による■英国ヴィンテージ家具&アンティークのセレクトショップ■
ブリティッシュビンテージプラスのMisakiです。

さて、今日はちょっとセンチメンタルなお話をひとつ。

最近、オンラインショップに同じようなアンティークラダーが2脚アップされたのですが、
みなさんご覧になりましたか?

側面に残る英文字が魅力で、しっかり使い込まれた風合いが素敵なアイテムです。


普通だとそれで終わってしまうんですよね。

ポール店長の口から、あるストーリーを聞くまでは・・・。

2脚のはしごの側面にうっすらと残る文字。
よく見ると 「A R Blick & Son」 と 書かれていますが、
これはイギリスにおいて、昔ながらの商売の名前の付け方に由来しています。

「A R」 の意味は、Andrew Richard (アンドリュー リチャード)のような名前の頭文字。
「 Blick 」は苗字。「& Son」 はもちろん「その息子」ですね。

このことから、A R Blickという人が創立し、その息子たちが跡を引き継いだ商売だということが
分かるのです。

同じように、当店で扱っている砂糖を輸送していた麻袋や、野菜の輸送に使われていた木箱などにも、
その商売を担っていた人の名前が記されていて、とても興味深いです。


今回のはしごは、2脚ともポール店長が地元でなじみの古道具屋でたまたま見つけた代物です。
そこの白髪のご主人の話では、A R Blick & Son は地元ではかなり有名なビルダーだったそう。

A R Blick & Sonの建てたストーンハウス郵便局 1930年代
「ほら、そこの角のポストオフィスも1930年代に彼らが建てたんだよ。
この地域のほとんどの石造りの家もおそらくそうじゃないかな。
なんせ100年以上続いてきた老舗ビルダーだからね。」

「でもね、そこももう跡継ぎがいないんだってさ・・・。」
「だから、この年季の入ったはしごがここにあるって訳さ。」

不況。後継ぎ不足。
どこの国でも、きれい事だけでは解決しない沢山の社会問題が存在することは確かです。

ただ、そんな背景を知ると・・・。

この2脚のハシゴを、単なる商品としての「アンティークラダー」としては見られない
この仕事に従事する者としての、大きな責任のようなものを感じずにはいられないのです。

現在のストーンハウス郵便局。変わらない姿で住民の生活を支えています。

ストーンハウスという名の通り、この地域には昔からそこで採れる石を材料として家が作られてきました。